まぐろ

広すぎる水槽の中、生き残りのまぐろは悠々堂々と泳いでいる。その姿から悲壮さなどは微塵も感じられず、力強かった。ふと、私は何故まぐろを見に来ようと思ったのか、わからなくなった。かなしいまぐろを見たかったのかもしれない。しかし、まぐろはまぐろだった。まぐろ以上でもまぐろ以下でもなかった。
私は生き残りのまぐろに対しての浅はかな期待を恥じ、銀色の体を暗い展示室に煌めかせるまぐろを見上げじっと眺めた。